関空から乗り換えを含めて18時間かけてスイスのグリンデルワルトの小さなホテルに着いたのは、午後10時でした。若い夫婦が経営する居心地の良い宿でした。一週間もいたのでスタッフがこちらの顔を覚えてくれて外で出会った時なども笑顔で近づいてきて声をかけてくれました。

グリンデルワルトは4000m級の山の麓の谷底に近い斜面にあります。反対側の山の斜面にも三角形の屋根の同じ形の家が点在していました。3階建ての大きな家も小さな平屋の家も同じ形です。その家々の間をスキーヤーが滑り降りて来て、下の駅から登山電車で再び上のゲレンデへ上がって行くのが見えます。ホテルや商店が軒を連ねている町の中心は端から端まで歩いても20分くらいです。スキーパスを持っていればバスや登山電車はチケットを買う必要はありません。毎日何らかの交通手段を使ってゲレンデまで登って行きました．日本人ガイドの二人の女性が滞在中コースガイドをしてくれました。15人ほどの客をきめ細かな心配りで案内してくれました。空港に出迎えてくれたのも女性、女の人がずいぶん海外で頑張っているようです。スキーは自己申告でガンガン滑るうさぎさんチームとゆっくりカメさんチームに分かれて滑りました。私は言うまでもなくカメさんでした。

初日二日目はあいにくの天気で時々太陽が照った時に山が見え隠れするくらいでしたが、三日目はよく晴れて007の映画で有名な(そうです)シルトホルン2970mの頂上にある回転レストランから360°の大パノラマを楽しみました。007の映画のハイライトシーンを上映している部屋もありました。狭い頂上にこのような巨大な施設をよく造ったものです。この日転んで膝を痛めたので帰りのスキーで傾斜の急な場所ではビビってしまいました．翌日のスキーは止めてヨーロッパ最高所にある鉄道駅ユングフラウヨッホへ行きました。3454mの地点にあります。アイガーの山腹を繰り抜いた長いトンネルを登って行くとアイガー氷河がゆったりと下に延びていました。「トップオブヨーロッパ」の気分を味わい、ここのチョコレートをお土産用に求めて食事とコーヒーを楽しんできました。

次の日も私だけスキーを止めたのでスキーパスを使って電車で麓のインターラーケンオストまで行ってきました。線路沿いには大きな工事用クレーンが設置され河川工事の最中でした。地球の温度が高くなって氷河から溶け出す水への対策なのかも。駅前のコープで買い物をしましたが、野菜や果物は必要な量を自分で袋に詰めて備え付けの秤で計量し打ち出してきたバーコードを貼ってレジへ持って行きます。バナナとチーズとパンを買って広場のベンチで昼食を摂りました。

時間が経って思い出してみると、地図を手に目的のお店を探していると「何か手伝えることはないか」と一緒に探してくれた人。一人で電車のシートに坐っていると車掌さんが知っている限りの日本語を並べて戯けてみせてくれたり、買い物中時間をかけて探していると高校生くらいの女の子達が寄ってきて私の口にする変な英単語から探し物を見つけてくれたり、スイスの小さな町で出会った人々は皆優しく親切でした。ほとんど英語のしゃべれない私でも小さな冒険を楽しむことが出来ました。膝を治して体力をつけて、山に牛が放たれ花の咲く頃もう一度行ってみたいものです。