ウェルネスクリニック

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内科・生活習慣病(糖尿病・高脂血症・高血圧)・甲状腺を診療する柳井市の病院です。

トウニョ
〒742-0021 山口県柳井市柳井1547-1
2012.06.23

CGM(iPro2)でフルマラソンの血糖変動を測定(実験1)


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今回、持続皮下 グルコース測定器(以下CGM)のiPro2を糖尿病患者の血糖の変動を調べるために購入しました。まずは自分自身に使用してみてどのように血糖が変動す るかを次の二つの実験をして調べてみました。実験1;フルマラソンを走ると血糖はどのように変動するか。実験2;焼き肉を食べると血糖はどのように変動す るか。 

CGMは皮下に針を刺して、レコーダーを取り付けて3日間の皮下組織のグルコース濃度を測定し、血糖を反映するので、指先から血糖測定(自己血糖測定)を1日4回おこない補正をして、持続的に血糖変動の状態を知るための器械です。今年4月にiPro2というハマグリぐらいの大きさの小型の器械が発売され、購入しました。そこでまず自分自身に3日間装着して、使用心地や血糖変動を調べてみることにしました。そこで日頃血糖がどのように変動するか気になっていたことに関して二つの実験をしてみました。

実験1

背景

フルマラソンを走る時に20キロ以降はエネルギー切れになるので、ゼリーなどを補給するようにしています。30キロ以降はやはりしんどくなってきているので、血糖は下がってきているのか疑問に思っていました。

目的

フルマラソンを走った時の血糖の変動はどうなっているか


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方法

iPro2を使用して、家から柳井〜光〜田布施をめぐって柳井まで戻ってくるコース43キロを、1キロ8分、5キロを40分のペースで走り、水のみ補給しながら、その間の血糖の変動を調べてみる。


結果

午前5時起床、血糖が67、朝食(575キロカロリー、糖質107g)を食べて、午前6時40分血糖が141でランニングをスタートしました。5キロごとのタイムを計測しながら、水を2リッターのみ、午後0時25分に家に戻ってきました。帰ってきた時の血糖は97でした。タイムは5時間45分、体重は前後で2キロ減少していました。

CGMで血糖の変動をみると、スタートして30分もすると血糖は100くらいに低下し、その後は緩やかに20キロ過ぎまで(午前9時頃)血糖は低下し、その後血糖が急に75まで低下していました。その頃は標高150mの峠を越える上り坂にさしかかり、ちょうど峠のピークが午前10時まえで、その時が血糖の最低値になり、下り坂になって血糖も回復してきました。平地はほぼ一定のペースで走っていましたが、上り坂は筋肉に負荷がかかり糖の消費が高まり血糖が低下したのだと思います。30キロ以降も緩やかに血糖は低下気味ですが、極端に30キロや35キロで低下することはありませんでした。

カロリーを坂道の負荷は考慮せず、体重、距離、時間から計算すると3200キロカロリーのエネルギー消費でした。食事で575キロカロリーを取りましたから、残りの2600キロカロリーは体内のエネルギーを消費したことになります。肝臓のグリコーゲンの消費もありますが、単純に脂肪の燃焼によると考えると、1キロの脂肪を燃焼するのに7000キロカロリー必要ですから、脂肪は300gくらい燃焼したことになります。

体重は2キロ減少していましたから、2-0.3=1.7キロは水分が汗などで減少したと考えられます。

考察

平地を走ると血糖は緩やかに低下し、上り坂になるとエネルギー消費が高まり、血糖が低下していました。しかし30キロ以降の急激に血糖が低下することがなかったのは、30キロ以降にしんどさを感じるのは単に血糖が低下してエネルギー不足になっている訳ではないことがわかりました。エネルギー補給のタイミングとしては上り坂の始まる前には摂取した方がいいことがわかりました。今回はキロ8分というゆっくりしたペースで走るLSD(long slow distance)でしたから、もっと早いペースだとまたエネルギー消費は高まるのだろうと思います。また今度、マラソン大会でフルマラソンを走る機会があれば測定し報告します。